ランズエンド05 戦跡ラストリテンション
2010年12月31日刊行
ムサシノ工務店発行
戦後民主主義は、戦前の日本のあり方を「間違ったもの」としてとらえてきました。今の日本とかつての日本の間にあたかも断絶があるかのように扱ってきたのです。そのため、戦跡はこの半世紀、過去の過ちを示す「負の遺産」として、ほとんど省みられることがありませんでした。そのせいか、歴史的な価値を評価される機会が少なかったと思います。
しかし今、再び戦跡・軍事遺跡に対する関心が高まりつつあります。また戦争責任や贖罪とは違った観点から見直す動きも広がってきました。戦跡は日本人にとって「戦争とは何か」を問い直す貴重な材料となっています。
戦争は決して単なる過去の出来事ではありません。今こうして平和に暮らしている間にも、少しずつ新たな戦争の種が生まれつつあることを、僕たちは認識する必要があります。戦跡を知ることは、僕たちが二度と同じ過ちを繰り返さないための手がかりとなるでしょう。
タイトルの「ラストリテンション(Last Retention)」というのは僕の造語です。「最後の記憶力」という意味を込めましたが、さらには「戦跡の記憶は続いていく、受け継いでいく」という思いも込めています。
本書では、小笠原諸島・父島の「父島要塞」、和歌山県・友ヶ島の「由良要塞」、その他「函館要塞」「根室トーチカ群」「陸軍技術研究所・伊良湖試験場」「高知・前浜掩体壕」「長崎・針尾送信所通信塔」などを収録しています。