著者エミール・シンプソン
訳者吉田朋正
日本語版監修菊地茂雄
みすず書房
四六判
頁数 408頁
対立する二陣営が戦い軍事的な優劣によって政治的取り決めを行う。こうした旧来の戦争を自由陣営が今後主体的に戦うことはほぼないだろう。21世紀に欧米が関わった新しい戦争の本来の目的は治安の確立維持で、戦果ではない。そこでは戦争は政治の直接的な手段となっている。 英陸軍士官としてアフガニスタン紛争を戦った(2006-12年)著者は、欧米がそれを旧来の戦争概念で捉えたために暴力を拡散する結果を招くのを見た。本書はその戦場から放たれた批判の書であり、オックスフォード大学の歴史学徒であったこの青年による著作を、軍事史の大家マイケル・ハワードは「クラウゼヴィッツ『戦争論』の終結部と呼ぶに相応しい」と激賞した。 武力を否定しない点でこれは反戦の書ではない。所謂「テロとの戦い」の正当性は疑うべきだ。しかし本書の理論が実践されれば愚かな戦いは減るだろう。現代の戦略思考はオーディエンスへの説得力を具え、合理性、感情、道徳的一貫性への配慮を必要とする。問題は勝敗ではなく、戦闘は意味を付与される言語なのである。「この議論がもたらすパラダイムシフトは戦場を遥かに越えて意味をもつ」(ニーアル・ファーガソン)。戦争を問う現代の必読書。