ファンから参加者になるための「人」と「本屋」のインタビュー誌
創刊号は、「本と流通」
日販王子流通センター
子どもの文化普及協会
柴野京子(上智大学)
ツバメ出版流通
八木書店
トランスビュー
出版共同流通センター
106mm×182mm×10mm 168ページ
「HAB 本と流通」刊行に寄せて/松井祐輔
この本は約「2年前」に収録したインタビューを収めたもの。
「HAB」創刊号の発行から2年3ヶ月。創刊から「3ヶ月後」の2号刊行を目指して、作業は進められていた。
発行が遅れたのは完全に僕の問題だが、内容は古びるものではなく、もちろん刊行に際して直近の事情も注釈した。
ただ、内容は古びなくても受け手側の世界が変わってしまうことはある。この2年間で、「本と流通」というテーマが持つ意味は、だいぶ変わってしまったように思う。
昨年、総合取次の栗田出版販売は民事再生。
今年、同じく総合取次で、僕が以前働いていた太洋社も破産した。
だからいま刊行する、ということではない。
(制作が凍結したことはなく、本当に少しづつ、片時も忘れることなく、作ってはいたのだ)
ただ、悲観的な意見と、不安を煽るような記事ばかりが拡散される現状に対して、
真摯な姿勢で、可能性と選択肢を提示しなければいけない、と思ったのだ。
2年前の創刊号刊行時に、掲げた宣言文がある(Facebookの当店ページにある初期の文章がそれ)だいぶ散らかった文章だけど、内容を要約すると、こうだ。
1_まだ出版流通には可能性がある
2_書店の利益対策として、返品を下げたり本の価格を上げたりするんじゃなくて、HABはもっと直接的にどんどん出し正味を下げたい
3_いい本として世に出す覚悟がなければ、本なんてつくらない。
1_
H.A.Bookstoreとして取次を始めてみて、取次口座を持っていない(世間一般には本屋と認識されていない)、本屋さんがこんなにたくさんあることを知った。僕はそこにも本を届けられる流通を「HAB」でもつくっていく。もちろん、取次経由の出荷は引き続きツバメ出版流通さんにお願いしている。既存の流通を、新しいルートをハイブリットに使いながら、届けるべきところに本を届けていく。
2_
創刊号である程度の部数が見えたこともあり、今回は買切条件を定価の60%で設定した。委託は変わらず75%+取次経由。その間の差は、まだ少し広く持っていたいと思う。どうしても責任感が異なるから。もちろん、チェーン店の制約で買切NGのところもあると思う。そういう場合は、繰り返しになるけれどツバメ出版流通を使ってもらえれば。利便性は保持しながら、リスク負担の差異はより明確にしていきたい。
3_
真理。世界を変える覚悟がなければ、いまどき本なんて出さない方がいい。
栗田出版販売、そして太洋社がなくなったとき。
本当に悔しかった。でも何も諦めたくはなかった。
この半年で、本屋を拡大し、取次も始めた。
そしてまた今回、本を出す。
まだ間に合うはずだ。
失われたものは確かにある。
でも、本当に大切なものは何も損なわれていない。