著者 アサノタカオ
発行 サウダージブックス
著46判変形 128ページ 並製
装画 nakaban
固有の時間を生きるひとりのことば。それを自分自身の内にも探してみようと思い立った。すると、旅と読書の記憶に行き着いた。ことばの通じない異国を旅すること、知らない内容の書かれた本を読むことは、慣れ親しんだ世界から切れて、ひとりきりになるさびしさをともなう。しかしそのさびしさと引き換えに、ぼくは未知の世界へつながる喜びを得たのだった。
——アサノタカオ
「旅と読書は、「本当に大切なこと」を、さびしさに震える君に教える」。サウダージ・ブックスの編集人である著者が書籍や雑誌、リトルプレス、ウェブマガジンに寄稿したエッセイ、コラム、旅のノートに記したことばを集成した随筆集。ひとりになって自分自身を見つめ直す時間のなかで、世界や他者につながることの意味を問いかける。
購入者特典の付録には、夏葉社の島田潤一郎さんとの対談「ことばは個人的なちいさな声を守るもの」を掲載。
目次
本を読む夜が深く極まるとき
1 本から遠く離れて——読書論
散文 本から遠く離れて
ひとりになること
愛する人たちとの絆を切って
散文 本屋さんに行くと沈黙がある
小さな声が小さな字にくっついて
京都の善行堂で
本を書いたことのないぼくに
散文 「自由」の風からの贈り物
主人のない夜の本小屋では
散文 書を持って、海へ出よう
カバーを外して、中身をぶん投げ
文字に当てていた指が
海は、ひらかれた書物に似ている
散文 コーヒーと椅子、そしてことばのろうそくたちと
ことばが見つからない
本を読むことが苦しみとなり
2 君のものではない、世界の声に耳をすませろ̶旅の短章
散文 君のものではない、世界の声に耳をすませろ
サンパウロから州の西に向かう
必要最小限の生活用品
ジャングルの巨木から切り出した数本の柱が
夜の通り雨が降りはじめた
散文 霧のなかの図書館で
出発前日に大雨が降り
「世界の秘密を知るために」
雲ひとつない星空の下で
散文 そしてダラダラはゆく
飛行機が南の島の上空にさしかかり
散文 群島詩人の十字路で耳をすませて
散文 詩と夜空にかがやくもの
3 読むことの風
散文 読むことの風
海に向かって、石ころを投げる
あとがき